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M・ナイト・シャマラン『オールド』を観る。何だかコロナ禍をそのまま隠喩/メタファーとして使ったような映画だと思った。仕掛けは簡単で、「1日にほぼ人間が一生涯に該当する歳を重ねる海岸」に閉じ込められた数人の老若男女たちのパニックを描き、そこか…
濱口竜介『ドライブ・マイ・カー』を観る。情けない話だが、私は実は濱口竜介を語れるほどコアに鑑賞を深めた人間ではない。『ハッピーアワー』も『寝ても覚めても』も1度ずつしか観ていないのだった。だが、『ドライブ・マイ・カー』はそんなアマちゃんの私…
小津安二郎『東京物語』を観る。今回の鑑賞では「時が経つ」ということについて考えさせられた。時間が過ぎるということ。言うまでもなく人類史上時が止まったことなんてないわけで、時間が経過することと私たちの生活は密接につながっている。時が経てば子…
エレイン・コンスタンティン『ノーザン・ソウル』を観る。いつもながら私の個人的な繰り言を書くと、私自身この映画のジョンとマットのようなボンクラな男の子だった頃があった。変わり者と呼ばれても自分のテリトリーを守り続け、マニアックな音楽に走りその…
ミミ・レダー『ビリーブ 未来への大逆転』を観る。人間の可能性とはなんだろう、と(柄にもなく)考えてしまった。自分なら自分の中にどんな力が眠っている、と言えるのだろう……この映画は法廷劇をキモに据えたヒューマン・ドラマである。故に、丁々発止の論…
ジム・ジャームッシュ『コーヒー&シガレッツ』を観る。「コーヒーとタバコ」。このふたつの共通点はというと多分(あくまで私見だが)庶民の娯楽であり、中毒性があること、体に悪いことであるだろう。私は親の躾の影響でタバコというものとは無縁に生きてき…
ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』を観る。またしても自分語りがマクラになるが、生きていて時折「おれって一体なにをやっているんだ……」と思うことがある。こんな人生を送るつもりなんてなかっ…
劇団ひとり『浅草キッド』を観る。いきなり脱線するが、私は子どもの頃はひょうきん族派ではなくドリフ派だった。だからいかりや長介が『だめだこりゃ』という自伝を出した時も虚心に読んで、彼がテレビの世界に君臨したキングであったにも関わらず演芸場で…
是枝裕和『誰も知らない』を観る。システムから外れてしまう、とはどういうことなのかなと考えてしまった。当たり前の話をするが、私なら私はひとりで生きているわけではない。電気ガス水道といったインフラが支えられており、なおかつ住む場所を契約関係を…
リン=マヌエル・ミランダ 『tick, tick... BOOM! : チック、チック…ブーン!』 を観る。いきなり妄想から語るが、この映画が公開されたのと同時期に同じくネットフリックスで邦画『ボクたちはみんな大人になれなかった』が公開されたことには単なるシンクロ…
ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス『リトル・ミス・サンシャイン』を観る。ひと口で言えば、苦笑いするしかない映画だった。口の中に広がるのは苦味ばかりで、甘くこちらを酔わせてくれる瞬間がない。それだけこの映画が非常に辛辣にジョークを繰…
クレイグ・ブリュワー監督『ルディ・レイ・ムーア』を観る。いきなり全方向から袋叩きに遭いかねないことを書くが、実は私は黒人文化を扱った映画が苦手である。黒人文化の結晶であるとも言える(と、乱暴にくくるのはまた火種になりうるのだが)ジャズやヒ…
ビー・ガン監督『凱里ブルース』を観る。当たり前のことだが、デビュー作を論じるのは難しい。なぜなら、その監督がなにを摂取して育ちどう試行錯誤してきたか、原則としてはそのデビュー作に触れる以外に他に知る材料がないからだ。デビュー作が俗に言うラ…
森義仁監督『ボクたちはみんな大人になれなかった』を観る。内省/内向的な映画だなと思った。そして、最初のうちは私はこの映画に肯定的な印象を感じることができなかった。映画は恐らく今年46歳になろうとする(もしこれが正確なら、私と年齢面では一致す…
是枝裕和『海街diary』を観る。少し前に日野啓三のエッセイ的な小説を読んでいた時に、人間が(人類が、と書くべきか?)初めて「死」という概念を自覚したのはどの段階で、そしてそれを言葉に表現しようとしたのがどの段階だったからかハードに考察している…
ジム・ジャームッシュ『デッドマン』を観る。考えてみればジャームッシュという人は多才なのかそれとも器用貧乏なのか、よくわからない(もちろん、全ての作品を観ていないのでこれは当てずっぽうの推測が入るのだが)。作品は時にシュールに非現実的な要素…
小津安二郎『小早川家の秋』を観る。私事から書き始めると、小津の映画はどうしても構えて観てしまう。それは決して「クラシック」だからと言うのではない。ただ、ゴダールやトリュフォーを観るようには無邪気に小津を楽しむ(というか、悪く言えば小津と戯…
ホン・サンス『それから』を観る。『それから』といえば当然夏目漱石の名作が連想されるわけだが、本作にも夏目漱石の名前は登場する。その漱石のことを、かつてとある出版社が「超弩級のロマンティスト」というキャッチコピーを付して紹介していたのを思い…
ミロス・フォアマン『マン・オン・ザ・ムーン』を観る。夭折したアメリカのコメディアンであるアンディ・カウフマンを題材にした映画だ。これで4度目くらいの視聴になると思うのだけれど、R.E.M.という私の大好きなグループの曲が使われているからという理由…
ホン・サンス『夜の浜辺でひとり』を観る。個人的にあまり積極的に使いたくない言葉として「メンヘラ」という言葉がある。私自身精神科通いを続けている身であり、メンタルをこじらせている自覚があるのでこの蔑称(場合によっては自虐的に当事者が使うこと…
セオドア・メルフィ『ムクドリ』を観る。この監督の映画はなぜか好きだ。洒脱だし、ド派手なことをやっているわけでもないのに心に残る。それはきっとこの監督の映画が「生っぽい」からだろう。登場人物が活き活きしていて、自由闊達に生きている人たちがぶ…
佐藤祐市『キサラギ』を観る。実に洗練された映画だと思った。特に凝ったカメラワークや奇を衒ったファッションでこちらの気を引くようなものではない。だが、それでいて野暮ったさがなくスマートにまとまっている。観ながら、タランティーノの逸品『レザボ…
ダニー・ボイル『スティーブ・ジョブズ』を観る。そうか、今年でジョブズが亡くなって10年が経つのか、と思ってしまった……と玄人っぽく書いてしまったのだが、実は私はMacとは無縁に生きてきたのだった。ただパソコン関係に関して素人であり、かつ周囲が呆れ…
ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』を観る。なかなか興味深い映画だと思った。映画の画質もあってか、レトロな雰囲気を醸し出すことに成功している。そしてこの映画で語られる時代もまた、ニクソン大統領の時代で…
マルコ・プロゼルピオ『バンクシーを盗んだ男』を観る。不勉強なものでアートには疎く、従ってバンクシーというアーティストについても大した知識を持っていないのだった。だがこのドキュメンタリーはそんなバンクシーについてレアな形でこちらに問題提起を…
リー・アイザック・チョン『ミナリ』を観る。なかなか語りづらい映画だと思った。語れるところから語っていくと、この映画を観て私は「そうか、もう『アメリカン・ドリーム』の時代ではないのだな」と思ったのだった。例えば『ヒルビリー・エレジー』のよう…
パティ・ジェンキンス『ワンダーウーマン1984』を観る。前作パティ・ジェンキンス『ワンダーウーマン』はヒドい映画だと思った。私は、どんな映画に関しても拾うべき美点を拾いたいと思って映画を観ている(そうしないと時間の無駄だし、あるいは人様の映画…
ミヒャエル・ハネケ『隠された記憶』を観る。ハネケ監督は語り口の選び方に対して極めて繊細な人物であると思う。それは他の作品を観ても時に過激な断片を撒き散らす方向に向かう『71フラグメンツ』や、あるいはスマートフォンでの撮影を映画の中に取り入れ…
御法川修『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』を観る。いつもながら頓珍漢なことから書くと、大学を卒業する頃になって一社たりとも内定を獲得できなかった私は(そういう時代だったのだ)、遂に生きることを諦めて自殺未遂をした。だが、死にきれず生き延…
北野武『あの夏、いちばん静かな海。』を観る。実を言うと、北野武の映画というのはかなりクセモノかもしれない。蓮實重彦や淀川長治から賛辞を浴び、世界的にも評価されている彼の映画はしかし黒沢清や是枝裕和が撮る映画のようには「わかりやすい」ものだ…