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マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』

マイク・ミルズ『人生はビギナーズ』を観る。観ていて、そんなに深刻な話というわけではないのだけれど「ウェルメイド」と呼ぶにはややもたついている印象があったので、これは自伝的な映画ではないかと思った。あとになって調べてみると確かに経験を元に描…

松永大司『ハナレイ・ベイ』

松永大司『ハナレイ・ベイ』を観る。原作は泣く子も黙るあの村上春樹の短編で、こうして観てみると本当に春樹をめぐる状況も変わったものだなと思わされる。なにせ「キューブリックがオファーしても断る」というのがかつての春樹だったそうだが、早い時期に…

キム・ドヨン『82年生まれ、キム・ジヨン』

キム・ドヨン『82年生まれ、キム・ジヨン』を観る。実を言うと(隠すつもりもないのだけれど)、私は独り言を言う癖がある。発達障害と関係があるらしいのだが、この独り言というやつは面白くて時折「オレはこんなこと考えてたのか!」というようなことが言…

大九明子『甘いお酒でうがい』

大九明子『甘いお酒でうがい』を観る。確かにタイトルの通り、甘くほのかに酔わせてくれる映画だと思った。私は俳優で映画を観ない。相貌失認なのか、人の顔をなかなか覚えられないからだ(蒼井優と池脇千鶴を見分けられず恥をかいたこともある)。だが、こ…

デヴィッド・リンチ『ロスト・ハイウェイ』

デヴィッド・リンチ『ロスト・ハイウェイ』を観る。映画をわかるとはどういうことなのだろう。私はこれまで500本以上映画を観てきた計算になるが、映画を観て「わかる」ということがなにを意味するのかわからない。大真面目に書いている。私が書き殴っている…

ハーマン・ヴァスケ『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』

ハーマン・ヴァスケ『天才たちの頭の中~世界を面白くする107のヒント~』を観る。88分という比較的コンパクトな尺の中に、1000人以上の「天才たち」に「なぜクリエイティブなのですか?」と質問をした中から抜粋した回答を集めて一本の流れが見えるように構…

ミヒャエル・ハネケ『ハッピーエンド』

ミヒャエル・ハネケ『ハッピーエンド』を観る。この映画を観ていて、自分自身のことを思い出した。例えば父親が仕事の合間に暇を潰すべく買ったのだろう菊地秀行の官能小説や週刊誌を読んでしまった思い出、あるいは母親の若い頃(つまり、私をまだ授かって…

ミヒャエル・ハネケ『タイム・オブ・ザ・ウルフ』

ミヒャエル・ハネケ『タイム・オブ・ザ・ウルフ』を観る。「世界の終わり」をハネケらしく扱った映画である。ハネケが描く「世界の終わり」……なかなかそそられる。考えてみればハネケは「終わり」に敏感な作家だった。デタラメに思い返せば『セブンス・コン…

クロエ・ジャオ『ノマドランド』

クロエ・ジャオ『ノマドランド』を観る。私は今の会社で働いてかれこれ20年以上経つ。会社に愛着があったわけではない。辞めても他にやることもないので、ダラダラ続けているうちにそれだけの歳月が経ってしまったわけだ。知られるように終身雇用制度が崩壊…

ミヒャエル・ハネケ『カフカの「城」』

ミヒャエル・ハネケ『カフカの「城」』を観る。タイトル通りフランツ・カフカの未完の小説『城』をハネケなりに映像化したものである。ハネケとカフカ。興味をそそられる組み合わせだ。ハネケが一筋縄ではいかないパーソナリティの持ち主であることはこれま…

ミヒャエル・ハネケ『コード・アンノウン』

ミヒャエル・ハネケ『コード・アンノウン』を観る。「コード」という言葉は(半ば日本語みたいな言葉であり、だからこそなのだが)改めて「どういう意味だろう」と考えれば考えるほどわけがわからなくなる。「規定」や「準則」、つまり「ルール」みたいな言…

庵野秀明『シン・エヴァンゲリオン劇場版』

庵野秀明『シン・エヴァンゲリオン劇場版』を観る。私が大学生だった頃くらいに始まった『新世紀エヴァンゲリオン』も、遂に大団円を迎えることになった。私はテレビ放映されていたシリーズはスルーしていたが、その話題性がアニメの世界を超えて社会現象に…

マジッド・マジディ『少女の髪どめ』

マジッド・マジディ『少女の髪どめ』を観る。実にほろ苦いラブコメだと思った。ベタと言えばベタな「男装して男社会で頑張る女性」及び「その女性に惚れる男」を描いた話なのだけれど、そこにアフガニスタンやイランの移民や労働者たちが抱えている問題を盛…

ベン・ウィートリー『ハイ・ライズ』

ベン・ウィートリー『ハイ・ライズ』を観る。いかにもイギリスが本気を出したような映画だな、と思った。俳優で映画を観る人間ではないのでトム・ヒドルストンとジェレミー・アイアンズという名前も「なんのこっちゃ」だったのだけれど、作品の中で展開され…

リチャード・リンクレイター『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』

リチャード・リンクレイター『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』を観る。村上春樹の小説を思い出した。とりわけ、彼のデビュー作『風の歌を聴け』に似ているように思われたのだ。スジ自体は他愛もない映画である。高校時代実力派の投…

バーラ・ハルポヴァー&ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』

バーラ・ハルポヴァー&ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』を観る。もちろん、インターネットが安全な領域ではないことは私も知っている……つもりだった(私自身女性の顔のアイコンを使っているので、稀にスットコドッコイなユーザーから猥褻な画…

F・ゲイリー・グレイ『ストレイト・アウタ・コンプトン』

F・ゲイリー・グレイ監督『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観る。いきなりだが、私は銃を突きつけられた経験がない。従って、命がけの人生を歩んできたわけではない。『ストレイト・アウタ・コンプトン』を観ていてふと、そんな自分自身の幸せと言えば…

アンドレイ・タルコフスキー『僕の村は戦場だった』

アンドレイ・タルコフスキー監督『僕の村は戦場だった』を観る。私の好きなコラムニストの山崎浩一が、確か「戦争(の話題)は8月が旬である」と如何にも皮肉を込めて書いていたのを思い出す。その皮肉を踏まえても、8月になると私は土用の丑の鰻のように戦…

ジャン=リュック・ゴダール『ウィークエンド』

ジャン=リュック・ゴダール監督『ウィークエンド』を観る。最近山田宏一の力作『友よ映画よ、わがヌーヴェル・ヴァーグ誌』と『ゴダール、わがアンナ・カリーナ時代』を読んだのだけれど、未だに私はゴダールという人をどう捉えていいかわからないでいる。巨…

スパイク・リー『25時』

スパイク・リー『25時』を観る。どんよりしたものを感じさせる映画だった。ストーリー展開において必ずしも必要最小限のものだけで構成されているとは言い難い、どこかくどさを感じさせるものとして映ったのだ(女子高生にたぶらかされる高校教師の描写は、…

大宮浩一『夜間もやってる保育園』

大宮浩一監督『夜間もやってる保育園』を観る。実を言うと(秘密にしているわけでもないのだけれど)私は恋愛経験がないので妻も居ないし子どもも育てたこともない。だが、私自身がロクでもない幼少期を(むろん、親のせいでは決してないのだが)過ごしてき…

イルディコー・エニェディ『心と体と』

イルディコー・エニェディ監督『心と体と』を観る。綺麗な映像であり、洗練された映画だと思った。こんな言い草はどうかと思うが、漂白されて清らかになった映像を堪能できたような、そんな気がしたのだ。とはいえこれ見よがしにアートしている映画ではなく…

スパイク・リー『ドゥ・ザ・ライト・シング』

スパイク・リー監督『ドゥ・ザ・ライト・シング』を観る。タイトルを直訳すると「正しいことをしろ」となる。これがクセモノだ。当たり前の話をするが、みんながみんな「正しいことをしろ」という言葉に愚直に従えば当然衝突が起こる(例えば死刑反対派と死…