跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/07/31

BGM: Ryuichi Sakamoto "energy flow"

片岡義男『英語で日本語を考える』を読み終える。片岡義男という人はとても賢明で繊細な人だという印象を感じる。彼は自分の思考の中で、様々な日本語が英語に変化するその過程を忠実に言い表わそうとしていると思った。彼というフィルターを通して言葉がどう変化するのか。これは自分自身の批評性を信じているからこそできることだろう。片岡義男とはそうした批評家であったからこそ今に至るまで小説や批評、エッセイといった分野を縦横無尽に横断して書き続けられたのではないか。そう思った。彼が書き残した小説も読むべきだと思いつつ、なかなかそこまで読めていない。

読書されるなんて素晴らしいですね、と言われることがある。そんなことはない。ただ、私の場合は他に時間の過ごし方がわからないから本を読むだけなので、村上春樹の作品の登場人物のように友だちの作り方や一緒に遊ぶ過ごし方を知らないだけだったりする。あるいは過去にいじめに遭っていた時、本の中に逃げ込むしかなかったのでその名残かもしれない。生きづらかったので、高校時代死んだふりをして過ごしていた頃によしもとばなな村上龍を読み、ピチカート・ファイヴを聞いて希望を繋いでいた。東京に思いを馳せて……そこから遠くまで来てしまった。

夕食時、LINEでとある方が亡くなられたとの知らせを知る。その方は断酒会でずっとお世話になった方で、私が入ったばかりで右も左も分からなかった時からずっと励まして下さっていた方だ。その方の尽力で断酒会そのものが立ち上がったとのこと、そしてずっとレールを敷き続けて後進の私のような断酒のひよっこへの道を示し続けておられたこと。それらは確実にその方の偉業と呼ぶに相応しいものだ。そう思うと改めて頭が下がる。その方と出会えたことは確実に私にとって幸せなことだった。改めて哀悼の意を表したい。合掌。

悲しいニュースを知っても、私の身体は動き続けて止まらない。確実にお腹が空く。こんな時でも何かを食べたくなる。夕食で鶏肉のソテーを食べて、その後寝るまでの時間をイアン・マキューアン『最初の恋、最後の儀式』を読んで過ごす。古典的な完成度の高さに唸る。センセーショナルな題材を扱っているが、デビュー作とはにわかに信じられない熟達した筆致があるからこそ安心して読め、作品の中で膨らむ余韻に酔わされる。図書館で調べたら彼の初期作品を読めるようだったのでぜひ借りて読んでみたいと思った。片岡義男イアン・マキューアンイアン・バンクスドン・デリーロ。「夏休み」の読書は続く。