今日は休みである。今朝、例によって英会話関係のZoomミーティングに精を出す。その後は夜に予定していた忘年会までまったく予定もないので、どうせなら思いっきりゴロゴロ・ダラダラと自室で過ごすかと思っていたのだけどそれも味気ないので近所のブックカフェに遊びに行きコーヒーでもいただこうかと思っていた(そこのオーナーの方に、今年お世話になったことに対して感謝の意をあらためてお会いしてお伝えしたいとも思っていた)。すると、グループホームの管理者の方からLINEが届き午前中に2人で一緒に冬服を買いに行ける段取りが整ったと聞いた。午後はその方は別の用事もあり忙しいのだけれどどうするか、という。それでしばし困った。発達障害の基礎知識として、こうした急な予定変更に弱いというのがあるからだった。だが考えて、冬本番を迎えこの機会を逃すと正月にゆっくり買い物できる時間なんてないので、したがって年始の落ち着いた時間を待たねばならずそうこうしていると別の予定が重なってしまい大あわてになるということも考えられるのだった。なので、ここは(あえてこんな言葉を使うが)「男がすたる」と思い買い物に行く決意を固めた。
その管理者の方とぼくと2人でさっそく合流しイオンに向かい、2人で服を見繕う。パジャマやシャツやトランクス、ジャケットに靴といったものをぼくなりに慎重に選ぶ。日記で書いてきたように、ふだんぼくは服を買うなんてことは楽しまない(こういう興味がないことはとんと・トコトンやらないというのも実に発達障害丸出しである)。したがって、実に「タフな」時間だった。でもねばり強く管理者の方が付き添ってくださり、かさばる荷物さえ持って下さったのでそれがありがたかった。なんとか午前中に買い物を済ませ、たくわえていたお金で支払い部屋まで持って帰る。その後は昼食を摂った。すると、なんだかそれだけで精根尽き果てたような気になってしまった。なので少し横になってしまった。
午後になり、ブックカフェに向かいそこでオーナーの方にお会いする。年末の営業でお客さんも多そうだったが、そんな中でもオーナーの方は時間を割いてお話しする時間を作って下さった。今年、この方に薦められて絵を描く機会を得たこと(カンバスまでいただいたのだ)、ぼくが通っている英会話教室のこと、春に行われる新しい美術展のことなどを話す。その後、席をお借りしてコーヒーとお菓子をいただきつついつもながら英語のメモをそこで書きつける。入り口の本棚で古本(文庫本)が1冊100円で売られていて、そこで三島由紀夫や桜井哲夫の文庫本などを合わせて3冊買い求めてしまった(慣れというのは怖いもの。服は買うのに躊躇するのにこういう時はすぐ手が出るのである。パブロフの犬のようだ)。
そのうちの1冊が、これまで気になってはいたがどこか「敬して遠ざける」心理から読まず嫌いで済ませてしまっていた著者・梁石日による『タクシードライバー日誌』だった。この著者は韓国人で、過去にタクシードライバーとして東京で「流して」いた時期があるという。その頃のことを日記として書きつづったもので、実はぼくがそんな苦手意識を勝手に募らせていた理由としてはいかにも情念でどろどろ・こってりした世界が広がっているのだろうという偏見があったからである(いや、まったくもって根も葉もない偏見なのだが、たぶんに映画『血と骨』の影響だろうか)。しかし実際にページを繰ってみるとこれがべらぼうに面白い。筆致は実にクールでいかなるこちらの安い・安直な同情をも拒む強度があり、その奥にたしかに脈打つハートのぬくもりが備わっているとも思った。あるいはこれは「血が通った」ぬくもりとも言えそうだとも思った。メモを英語で書き書き、その梁石日の日記を読みふけって過ごした。
夜になり、ぼくの住むグループホームの近所にあるレストランで友だちと忘年会を楽しむ。そこでおいしいカレーをいただきつつ、今年の思い出話などさまざまな話に興じる。英会話教室や国際的なお祭りについて、どうやってそれぞれのメンバーが英語学習を楽しんでいるか、世界の三大文豪とは誰になるか(ウィキペディアを引きつつ)、それぞれのメンバーがいまなお仕事を続ける秘訣について、などなど。実に楽しいひと時だった。最後の話題についてあれこれ、会が終わったあとも考え込んでしまった。ヒジョーに僭越ながら、ぼくはそもそも「ほかのこと(起業・資格勉強)をするゆとりもない」「家に金もなくもうあとがなく、留学・進学する余裕もありえず、引きこもる余裕もない」という理由から「半年ほど持てばいいだろう」と思っていまの仕事を始めた。それからも山あり谷ありで、なんだかそんな「半年ほど持てばいいだろう」が20年続いていまのキャリアになった、というのが正直なところだ。いや、自分の人生を見渡して5年後や10年後のことを考えられる人はそう生きればいいと思う。でも、ぼくはそうできない。常に、「いま」「この瞬間」を生きている。たぶん器用な生き方ではない。でも、そういう人生もある。そう思い、午後に読んだ梁石日の本のことを振り返ってしまった。楽しい時間をありがとうございました。