でも、いったいこんなふうに考えがぐるぐる回ってしまいそこから出られなくなって、モヤモヤしてしまった時は昔のぼくだったらどうしていただろう。そんな時は真っ先に「ストレス解消」と称して酒を買い込み呑んだくれてしまっていたなと思い出す。そうすることによって「憂さ晴らし」を行い現実から逃げたのだった……それはでももちろん「一時しのぎ」な解決法でしかない。だから解決にはつながらず、むしろ「つけ」を背負う羽目になったことを思い出す。
その後、ふとスマートフォンでネットをうろうろしているとフランスの作家ジャン・ジュネの面白いアフォリズムを見つけた。「美というものがたった1つの傷以外から生まれることはない」から始まる力強い名言だ。とても感銘を受けたので、それをぼくの手で日本語に訳してみたくなりやってみた(でもフェアを期するために書くと、フランス語はぜんぜんわからないのだった。これはフランス語からあらかじめ英訳された名言をぼくなりにつたないやり方で和訳した「重訳」である)。思えばぼく自身もそんな感じで、心の中に負った傷(トラウマ)のせいでいろんなことを学んだなと思い、ジュネの仕事に興味を持った(『花のノートルダム』『薔薇の奇蹟』は持っているが積読なので、またページを開いてみたい)。その後、イオンにある未来屋書店でブレイディみかこの新刊『転がる珠玉のように』を買い求めた。
夜になり、Zoomのミーティングに参加する。友だち相手にぼくがプレゼンターとなってプレゼンテーションを行う。どんなふうにコミュニケーションの作法を学んだかについてだ。10代の頃、生徒たちの間でまったくの「奇人」「キモオタ」だったぼくはそれこそ死んだふりをして教室の中で置き物のように静かに本ばかり読んでいた。もちろんそれは昔の話。いま今回は参加者の方が活発に質問されていきおいぼくも自分のことをたくさん話すことができた。実に楽しいひと時だった。ありがとうございました。
"Beauty has no other origin than the singular wound, different in every case, hidden or visible, which each man bears within himself, which he preserves, and into which he withdraws when he would quit the world for a temporary but authentic solitude" - Jean Genet
「美というものがたった1つの傷以外から生まれることはない。それは人によって違うものだけれど、見える傷であれ見えない傷であれそいつがそいつ自身の内でこらえていて、大事に保っていて、いっときではあっても世界から離れてほんとうの意味での孤独に引きこもるために入り込んでいくような、そんな傷だ」ジャン・ジュネ(拙訳)