跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/01/28

今日は遅番だった。朝、沢木耕太郎のエッセイ集『象が空を』を読んでいると吉永小百合について書かれた文章が目を引いた。吉永小百合は自分が女優になっていなければ教師になっていただろう、と語ったという。歴史に「もし」はないというが、私自身の人生のことを考えた。もし私の人生が順風満帆だったら……東京に残って出版社で本を作る仕事をしたりできていただろうか。いくら考えてもそれで得になるわけでもないが、しかし自分は出版社で働くことや翻訳家になることに憧れていたという事実を思い出した。むろんそれはそれで険しい道ではあっただろうが。

『象が空を』を読んでいると美空ひばりについて書かれた文章にも出くわした。昨日の日記にも書いたが、アルコール依存症について語る機会があるので美空ひばりのことも語れればいいかなと思った。彼女もアルコール依存症だったという。石原裕次郎横山やすしといった人も依存症で、若くして亡くなっている。50代前半だ。アルコール依存症の平均寿命は52歳だという。私は今年47になる。私も、どうせ生きていてもいいことなんてなにもないのだし酒で死ねたらこんなにいいことはないと本気で信じていたことを思い出した。

52歳……いざその年齢に近づいてみるとまだまだ若いと思う。私が単にのんきな人間だからこう思ってしまうのかもしれないが……人生百年時代とも言われているのだし、これから晩年に向けてひとつ大きな仕事ができるのではないか、と思ってしまうのだ。偏屈ぶりを発揮して『断腸亭日乗』を記した永井荷風を思い出す。他にも晩年に大きな仕事をした作家や映画監督は山ほど居る(ああ、あの偉大なるクリント・イーストウッド!)。酒はつくづく魔物だと思う。今はもう酒に未練はない。止めたことは全然惜しいとは思わない。

HALTの法則、というのがあるらしい。空腹(Hungry)、怒り(Angry)、寂しさ(Lonely)、疲れ(Tired)。これらが重なると人はアルコール依存症に陥るというのだった。私はこの四重苦に随分悩まされた。今も寂しさには苦しめられている。おかしな話だ。今はLINE友だちも居るし、ひとりの時間は本を読んだり映画を観たりして過ごすこともできるというのに寂しさに苛まれているというのだから。LINEのオープンチャットを調べて、アルコール依存症当事者のグループに入って初心を忘れないようにしようと思った。