跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/01/13

BGM: 大江千里 "MAN ON THE EARTH"

十河進『映画がなければ生きていけない 1999-2002』を読んでいるのだけれど、改めて文章から感じ取れる落ち着きについて考えさせられる。昔は私もバカなことを考えていて、もっと論争的な文章やもっと毒を含んだ文章の方がキャッチーで多くの読者を惹きつけるのではないかと思っていたのだった。今はそんなことは考えていない。自分は論争には向いていないと思うし、誰かを罵倒したりする文章も書きたくない。静かな、穏やかな文章を信頼したいと考えるようになったのだ。ニーチェ言うところの「鳩の歩み」で世界を動かすような、そんな文章だ。

1999年から2002年と言えば、私はまだ映画に関心を寄せていなかった時期だ。もっと言えば、リアルの生活を生きることを諦めていた時期でもある。どうせ生きていたって大して面白いことなんて起こりっこない……そう思って、そこから逃げるためにパソコンにかじりついて酒に溺れて一日中過ごしていた。だからこの時期なにをしていたか、記憶にない。20代の半ばと言えば人生でも楽しい時期、もしくは成長する時期だろう。だけど私はこの時期ずっと停滞していた。そして、自分はこのまま死ぬだけだと思っていた。この田舎町で……。

だから、私にはもしかすると青春時代なんてないかもしれない。いや、裏返せば今こそ青春時代であるとも言えるわけだ。私は40を過ぎてとある方を恋して、ずいぶんバカなことをして、結局フラれた。そんなことも今では貴重な思い出のように思える。酒を止めて、淡路島で行われた研修で壮絶な他人の体験談を聞いて、発達障害を考えるミーティングに参加して……自分の人生が本格的に動き始めたのは、だから40からなのだ。それまではもう酒だけの日々で本もろくすっぽ読まなかったし、映画なんて全く観なかった。ああ、ひどい時期だった。

昨日も書いたのだけれど、私は今年で47になる。だが、今の私はそんな年齢に応じた落ち着きを感じていない。むしろ心はもっと若い。これは必ずしもいいことではない。それだけ私の心は成熟していないとも言えるのだから。だが、今をこそ楽しみたいと思い英語を学び、映画を観て本を読んでいる。この世の中にはもっと面白いことがいっぱいあるし、自分自身ももっと高められる。そう信じて貪欲に色んなことに手を伸ばしているのが今なのだと思う。聞く音楽こそカチャカチャしたポップスからしっとりしたジャズに移り変わったとはいえ、だ。