跳舞猫日録

Life goes on brah!

2021/11/10

パスカルだったか、人間の不幸は部屋の中でじっとしていられないことだと言ったのは……今日は休みだったのだけれど、部屋の中にこもって映画を観ようかと思ったのだけれどいざサブスクでいい映画を探そうとするも、どれを観ても引っかかるものを感じなかった。それで諦めて、グループホームの部屋から出て図書館に行き堀江敏幸『時計回りで迂回すること 回送電車V』を借りた。あとジュンパ・ラヒリ『停電の夜に』が既に借りられていたのでアリス・マンローアリステア・マクラウドの短編集を借りた。この冬は『冬の犬』を読んで過ごすことになりそうだ。

アリステア・マクラウドという作家は池澤夏樹が編んだ『世界文学全集』で「冬の犬」を読んでその凄みを知っていた。だが、改めてきちんと読もうと思っても後手後手に回ってしまっていた。アリス・マンローノーベル文学賞を受賞した時に(私はスノッブなので)読みたいと思って作品集に手を伸ばした過去がある。だが、読めずにいたのだった。この機会なので読みたい。それにしても、やはり新潮クレスト・ブックスはいい作家を揃えている。これからは迷ったら新潮クレスト・ブックスからランダムに作品を借りるのもいいのかもしれないな、と思った。

それで、午後に昼寝をしてからなにをしようかと思ったのだけれど結局有意義なことはできなかった。疲れているのだろうか。近所の施設に遊びに行ってそこで小説の構想を練ろうかとしたのだけれど、できなかった。さながらヒゲを切られた猫のように、方向感覚を失ってうろうろするだけの一日になってしまった。本を読もうとしても眠くなるし、映画を観ようとしても気分が乗らないし、いっそのこと寝て過ごそうかと思っても今度は眠くならないし……と暇だ暇だと過ごす。で、あとになって「やらなければならないタスクがあった」ことを思い出す。この効率の悪さよ!

夜、断酒会に行く。帰ってきて、オーシャン・ヴオンという作家の『地上で僕らはつかの間きらめく』という長編小説を読んだ。ベトナム出身のアメリカの詩人らしいが、そのルーツを持つだけあって言葉に敏感な人物が書いた繊細な作品だと思った。自身のクィア性を見つめ、アメリカがベトナムに及ぼした惨禍を描写し、自身の内側からこぼれ出る英語の一言一言を選びぬいて表現している。ロラン・バルトについて言及された箇所があるのも興味深い。私もバルトの書いたものは好きだからだ。これがデビュー作らしいが、この作家は次にどんなものを書くのだろう。