跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/12/04 BGM: エリック・サティ "3つのジムノペディ No.1"

朝、英語研究会のミーティングに参加する。そこで柳美里『JR上野駅公園口』の英訳版を読み進める。今回は私も英訳版を読んでいたので発表もできたのだけれど、いざ英語を私なりの日本語で翻訳してみるとさまざまな誤訳・誤解が現れる。「neatly」を「賢く」と訳してしまい、「これは『整然と』でしょう」と言われて恥をかいてしまった。ただ、そんなアホな私の日本語訳の発表も一部の方からは「よく勉強されてますね」とお褒めにあずかったので嬉しく思った。来月はイギリスのスナク首相の演説を読み進めることになる。気が抜けないが、有意義な時間を過ごしたと思った。

昼寝をした後、映画を観ようと思ったのだけれどいったい何を観るべきか見当もつかなかった。いや、観てない映画を虚心坦懐に観るべきなのだけれど、どうも気分が乗らない。何でもいいから観始めれば気分というのは乗ってくるものだとわかっていたが、それでも気分は言うことを聞いてくれない。それで諦めて、借りていた高崎俊夫『インディペンデントの栄光』を読んだ。これは日本の映画文化を引っ張ってきたレジェンド的存在である、ユーロスペースの立役者・堀越謙三が自らを語ったロング・インタビューだ。

読み進めて、読んだことは正解だと思った。この本では今では世界に名だたる才人のレオス・カラックスアッバス・キアロスタミといった監督と仕事をしてきた堀越謙三が、いかに映画を愛しかつマーケットに乗せられるように「バクチ」を打ってきたかが生々しく語られている。私の大好きな映画『スモーク』が日本でヒットしたのもこの方のおかげだということがわかった。北野武だってこの人との関係がなければ活躍できなかったはずだ。是枝裕和をまるっきり無視しているところがやや気になるが、しかし一流の「遊び」としての仕事をこなしてきた人だと唸らされた。

夜になる。Discordで開かれていたとあるミーティングに参加する。そこでいろいろ話す。話題は多岐にわたったのだけれど、私が記しているこの日記について「フェルナンド・ペソアみを感じる」と言われたのが光栄に感じられた。ペソア『不安の書』は私の愛読書で、すでに6周しているからだ……それでミーティングがはねたあとその『不安の書』を少し読んでみた。アーヴィングのオーソドックスな小説を読む傍ら、こうした「反物語」の性質を持つ作品も読むと何というか人間の作風の方向性や個性というものの奥深さを考えさせられる。今年はどっちに進めばいいのだろう。そうして彷徨う時間は私にとって楽しいひと時だ。