跳舞猫日録

Life goes on brah!

2021/10/24

図書館に行き、池澤夏樹『海図と航海日誌』を借りる。この本は私が大学生だった頃に読んだことがある。今から25年ほど前のことになろうか。そんなに長い付き合いをしている本はそうそうない。池澤夏樹は、私は小説はそんなに好きではないがエッセイや評論は好きでよく読んでいた。『海図と航海日誌』は読書に関する長めのエッセイを集めたもので、彼の持つ哲学的な思考と科学的な知識が十全に発揮された1冊だと思う。私は池澤ほどきちんとした読者ではない。古典をロクに読んでいないし、読んだ本も大抵は忘れている。なので、読者として尊敬している。

堀江敏幸『振り子で言葉を探るように』を読み、『河岸忘日抄』を読み始め……本ばかり読む日々が続く。読書とはなんなのだろう。紙に書かれている、基本的には一貫した論理を追う営み。なぜそんなことを続けるのか。前に訊かれて答えられなかった問いだ。私は、ただそれが気持ちいいからやっている。人間的に成長するとか知識を得られるとかいったことは「後付の」理屈だと思っている(それが悪いと言うつもりはないにしろ、「取ってつけたような」理屈だと思う)。楽しいから、もしくは「今やるべき」だと思うから、私は本を読む。

リチャード・ブローティガン『東京日記』『チャイナタウンからの葉書』という本も借りてきた。どちらも詩集なのだけれど、私もかつて詩を書いてみたらどうかと薦められたことを思い出した。詩か……私が尊敬するフェルナンド・ペソアポール・オースター金井美恵子といった作家は詩も書いている。池澤夏樹もかつては詩人だった。私は散文が好きだし、散文で書いた書評やこの日記が充分詩として機能していると思っているのだけれど、見様見真似で詩を書いてみるのも面白いのかもしれない。だが、誰の詩をモデルにしたらいいのだろう。

私が愛読している本の1冊で、フィリップ・フォレストというフランスの批評家の小説『さりながら』というのがある。小林一茶夏目漱石について触れた、日本をフランス人の目から見て記した1冊なのだけれど、その本のことを思い出して図書館で池澤夏樹が編んだ『日本文学全集』から小林一茶松尾芭蕉を扱った巻を借りてきた。やれやれ、今日の日記は本に関することばかりだ。もう一度確認しておくと、世の中には読書以外にも楽しいこと、人間的成長に繋がることは山ほどある。ただ、私は他に自分を育てる手段を知らないので本を読んでいるだけなのだった。