跳舞猫日録

Life goes on brah!

2024/05/31 BGM: Steve Reich - Music For 18 Musicians (Coldcut Remix)

今日は早番だった。今朝は天気もぐずつき、そのせいかまったくもってアクティブになにかやろうという気が起こらず往生する(なので毎朝の日課のシャワーもサボってしまった)。朝食後、相変わらずそんな無気力に苛まれつつもイオンで例によって本を読む。今回選んだ本は前にも書いた坂本龍一『坂本図書』で、2度目の読書になるのだけれどいまなおフレッシュな印象を感じさせるみずみずしさが印象的だった。どんな本・どんな著者に影響されてサカモト教授が自分自身を作り上げたかをこの本でつづっており、その平たい筆致に惹かれて読みふける。

この本が語っているのは教授のキャリアの晩年の問題意識だ。実に多彩な本に親しむ好奇心の旺盛さが伝わってくるが、根底・根幹にあった問題意識としては「時間」をめぐる考察を続けていたことが印象深い。おわかりのように、音楽は時間の流れを必要とする。あたりまえ体操みたいな話だが、ゼロ秒の音楽がありえないように音楽はまずそこにある期間の時の流れがあって、その上に音やメロディが乗っかっこそ成り立つ。坂本はこの時間という概念について、日本の漱石九鬼周造といった文献から海外の哲学まで幅広く狩猟しそして考え抜いたようだ。実にスリリングだ……時間は見えないものであり、もしかしたらある意味空想の産物、虚構の概念でさえありうるのではないか、とまで考えさせる(だから「時間は存在しない」と語る論者までいたりするようだ……人間存在がただそう感じるだけだ、と)。

本書の語り口を追うにつれ、実に彼のパースペクティブ(つまり、彼自身のおそろしく強靭な思索の深度・射程)が深く、哲学的な性格をはらんだものであることに文字通り畏怖を感じた(きっと彼はハイデガーの古典『存在と時間』にも親しんだはずだ)。『坂本図書』を読み終え、自分のことを考えてしまった。この本はそうして、ぼくが残りの人生・これからの未来において考えるべきテーマとはなんだろうかと考えることを誘う力があるとも思ったからだ。いったい、これまでの人生で考えてきたことはなんだったか。これからの人生でできるミッションとはなにか……それはたぶん、あのファニーな人生を思索に捧げたウィトゲンシュタインに影響されて生きてきたということもあってコミュニケーションの問題、意思疎通の困難さについてぼくなりに考えていくことかなと思う。

読み終えたあと、自分の内なる声に静かに、じっと耳を傾けようとした。というのはぜんぜんなにもやる気も起こらず集中することもできなかったので、柄にもないがクラシックまで聴いてみたりして(具体的にはドビュッシーラヴェルなどを聴いてみた)……実は毎朝、ぼくはこんな感じでいったい次になにをなすべきか、どうしたらいいのかわからず往生する。そんな考えが行き詰まると、もし今日死んだらどうしよう、もしこの心臓が止まることがあったらなんてことまで考える。なんともアホな脳だなとあきれる。

あすは休み。先にも書いたが、まだ心持ちがおだやかではなく調子が出ない。やる気がない。もしやる気が芽生えたら(気が向いたら)、山に行って自然を楽しみ心をリフレッシュさせたいと思う。さすがに山にはWi-Fiなんてないだろうから、オフラインで楽しむためにスティーブ・ライヒの名曲・傑作群をダウンロードしておいた方がいいのか……なんて考えた。