跳舞猫日録

Life goes on brah!

2023/06/27 BGM: Beastie Boys - Hey Ladies

その昔、沢木耕太郎のエッセイを読んでいたらこんな質問に出くわしたことがある。「今までの人生において、大事なことというのは男と女どっちに教えてもらいましたか?」。もちろん、今のような時代にこんな単純明快に人間を「男と女」で分類する質問は「ダサい」「イケてない」かもしれない。でも、ぼくはこの質問がなんだか気になってしまう。ぼくの人生は男と女、どっちに影響を受けただろうか……子どもの頃、ぼくはずっと女の子に嫌われて過ごしてきたのを思い出してしまう。ぼくが子どもの頃というのは今のような多様性の時代ではなかったのでまだまだ「男は男らしく」「女を守れてこそ男」な考え方が常識として「活きて」いたのだった。そしてぼくはひ弱で、運動もぜんぜんできなかったので「男らしくない」と思われて女の子から蛇蝎の如く嫌われたのだった。もっと言えば「エッチ」「スケベ」とも思われたりもした……だからぼくは、初恋の甘酸っぱい思い出というのを持っていない。ぼくは自分が人に恋をする資格があると思ったことがなかったからだ……何だかザ・スミスの曲の歌詞みたいだけど。

時は流れて……今の会社に入ってからもぼくは女性の上司にコテンパンに叩きのめされて、ずいぶんつらくあたられて苦しめられた。ミソジニー女性嫌悪)なんて端的に「くだらない」とぼくはつねづね思っているのだけど、それでも心のどこかでぼくは「オンナは信用できない」「あいつらは面従腹背で動いている二重人格者だ」とさえ思っているのかなとも思う。もちろんこれは全然合理的・現実的な考え方ではありえないけれど、それでも「オンナはやっかいな生き物だ」と思ってしまって……でも、人生とはうまくできているもので考えてみればぼくの窮地を助けてくれた人たちも女性だったことを思い出せる。ぼくが発達障害者である可能性を示唆してくれた、30代にして出会った恩人も女性だった。そして、40代になってぼくに「自分のことをそこまでボロクソに言うのは止めたらどうですか?」と厳しく言ってくれた恩人も女性だった。今、ぼくが「心の師」と思っているジョブコーチも女性である……そう思えばぼくの人生は女性との関わりで回ってきたのかなと思う。ロシアのビクトリアさんのようなステキな女性とも出会えたし、英会話サロンの主催者の女性ともなごやかに過ごせていて、そんな今が信じられない。

Twitterでぼくが信頼し、かつ尊敬している友だちが「2023年上半期に読んだ本」のベストを編んでいるのを知った。そして、ぼく自身のベストを編んでみた。今年上半期は仕事を休んでしまい寝込んで大変な目に遭ってしまった。上に書いてきたこともつながるけれど、ぼく自身のエッチな欲望について考えさせられて……その縁で谷崎潤一郎痴人の愛』やナボコフ『ロリータ』を読み返してみたりしたっけ。そして、ぼく自身の夢について思い至ったりもした。坂本龍一が亡くなったということで彼の自伝『音楽は自由にする』を読み返してみたり……あとは村上春樹の新刊『街とその不確かな壁』を買い求め、そして存分に満喫したりもした。「宍粟市と世界をつなぐ『ブリッジ』のような人間になる」という夢が芽生えたのも今年上半期の大事な変化だった。ぼくは心のどこかで自分に「Don't Look Back In Anger(振り返ってムカついたりするな)」と思って生きているのだけれど、たまにはこうして心の「棚卸し」「決算」をするのも大事なのかもしれないと思った。

夜、英会話教室に行く。そしてそこで今日は「あなたが夢見る夏休み」というトピックについてあれこれ話し合う。夏休みはどれくらい欲しいか、もらったらいったい何をするか(ステイホームで読書や映画を観るか、旅行するかなどなど)。ぼくの職場は夏は「かきいれ時」なので夏休みはないのだけど、もしもらえたとしたら一週間もらって両親が住む家に帰れたらいいなと思った。そして両親と一緒に「夏の魚」であるうなぎを食べられたら、と。旅行に行くとしたら台湾や香港にも行ってみたいし、MeWeで友だちが薦めてくれたニュージーランドにも行ってみたいとも思った。その後、ゲームに興じる。そのゲームは3つぼく自身の情報を並べて、どれが嘘か当ててもらうというものだった。ぼくは「実は早稲田を出た」「ホストとして働いていたことがある」「幽霊を見たことは1度もない」と並べてみた。みんなどれも結構真に受けたようで、あとで「ホストとして働いていたというのは嘘です」と言ったら驚かれた。でも、あれはぼくが「実はホストでなかった」ことを驚いたのか、それとも「早稲田を出たこと」がほんとうだったことを驚いたのか。それはまったくもって謎である……。

ぼくの2023年上半期ベスト
ニック・チェイター&モーテン・H・クリスチャンセン『言語はこうして生まれる』
坂本龍一『音楽は自由にする』
吉田健一『東京の昔』
谷崎潤一郎痴人の愛
ウラジミール・ナボコフ『ロリータ』
デイヴィッド・チャーマーズ『リアリティ+』
村上春樹『街とその不確かな壁』
カレン・チャン『わたしの香港』
邵丹『翻訳を産む文学、文学を産む翻訳』
三木清『人生論ノート』