跳舞猫日録

Life goes on brah!

A strange mail from another star

友よ

ぼくがこの銀河系に存在する惑星・地球にたどり着いてずいぶん経つ。ぼくが住んでいるのはこの星でもかなり東に存在する日本という地域だが、ここはなかなか居心地のいいところだ。何よりも人物が銃というナンセンスな武器を持ち歩いていないせいで外を歩きやすいし(とはいえ、この地域は厳密に言えばかなり狭い島なのだけれど)、料理もうまいし女性も物腰が柔らかい。ぼくのようなエッチな存在にも優しい場所だが、しかし時折この地域の独自の文化に面食らうことがある。その一端を今日はきみに対して話せればと思う。

この星では、ぼくらが母星にいた時に使っていたポータブル・ツールに似ているスマートフォンというツールを使って人々は話す(おかしな話だが、この地域では「スマホ」と訛って話される)。そのツールに入っているのがアプリという、つまりはソフトウェアなのだがそのアプリはぼくらの星のような国家謹製のものではなく、民間で開発しているらしきものなのだ。当然、民間の企業がその質を競い合っているせいでぼくらからすると奇怪な広告や音声が時々ポップアップされてしまい、未だにぼくは慣れることができない。

「線」、これを聞いてどう思うだろうか? 仮にぼくが「今日はきみに『線』しようと思う」と言ったとしたら、頭がおかしくなったんじゃないかと思うんじゃないだろうか。でもこの「線」はこの地域での隠語で正確には「ライン」と言う。例えば「帰ったら『ライン』送るから」、と。なぜ人々が語らい合うソフトウェアに「線」「ライン」という名前をつけるのか、ぼくからしたら謎どころか奇妙奇天烈としか言いようがないんだけれど、まあそれがこの惑星の人々のセンスなのだと思って受け入れるしかない。郷に入りては郷に従え、というやつだ。

それを言い出せば、「スマートフォン」はぼくたちの言葉に即して訳せば「賢い電話」ということになる。でも、この「スマホ」ってやつがそんなに大層なものだとは思えないんだ。ぼくたちのポータブル・ツールと違ってとても小さいし脆弱で、落としたらすぐ画面がバキバキにひび割れてしまう。幸いぼくは闇市場でぼくらの惑星の星人たち向けに取引された「スマホ」を使っているので取り替えるのは造作もないことだが、いったいこんなものを考えたやつは何者だったんだろう。彼もまた、もしかしたら「エイリアン」だったんじゃないかとぼくは睨んでいる。

また手紙を書くよ。アディオス。