跳舞猫日録

Life goes on brah!

2021/12/16

BGM: サザンオールスターズ "フリフリ'65"

森富子『森敦との対話』を読む。今なお伝説的な存在である森敦の人となりに肉薄した評伝で、細かいエピソードの集積から成っている。森敦の本は「月山」「鳥海山」しか読んだことがないのだけれど、切れ者であり同時にどこか憎めない森敦の魅力が伝わってくる微笑ましい本だと思った。彼の畢生の大作『われ逝くもののごとく』を読みたい、と思わされた。こうして読みたい本があるうちはまだまだ自分は大丈夫かな、と思う。まだまだ自分の中には、見知らぬ世界を知りたいという欲望や好奇心が眠っている。この欲望を大事にしたいと思った。

私は、自分の中身がひどく空っぽではないかと思うことがある。私のオリジナルな考えなんてなにもなくて、ただ外から取り入れた考えを自分の中でまとめているだけ、という。私なんてものはそんなに深くこだわるほどのものではないのかもしれない。ブレット・イーストン・エリスアメリカン・サイコ』という小説を思い出す。この本の中にもヒップな情報を集めすぎ、周囲に誇示しすぎて肝腎の自分のこだわりを失くした人が登場したのだった。あまり自分というものを見つめすぎてもおかしなことになるのかもしれない。

北方謙三が、自分の人生相談に相談してきた自殺願望を抱えた相談者に対して、「本を百冊読め。その間は自殺しなくて済む」と答えたという。私は、そんな風に自殺を考えている人にどんな本を推薦できるだろう。私自身、先に挙げた森敦やあるいは車谷長吉の本に慰めを得たことを思い出す。人としてダメな人物が、それでもなにかにかじりついて必死に生きている。そんな姿に共感を抱き自分も生きたいと思わされるのだった。どうせ人生なんて無意味なものかもしれない。だが、私はそれでも内田百閒やダニロ・キシュを読むだろう。

キルギス共和国の友だちから、英語を勉強したいのだけれどどんな本を読むべきだろう、と相談された。私は大学で英文学を学び、ポール・オースター『ムーン・パレス』で卒論を書いた。オースターの英語は勉強しやすいのではないか。あるいは、私は村上春樹を英語で読んだことがあるのでそれもいいかもしれない。今は私はルイーズ・グリュックの詩集を読んでいるので、合わせて薦める。こうして語学に没頭するのも自殺に効くかもしれない。確かに自分が向上していることが感じられるし、学んだ語学で「外」の人とコミュニケートすることで考え方が変えられるかもしれないからだ。ひとつの参考になれば幸いである。