跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/10/01

村上春樹ノルウェイの森』が日本でベストセラーになった理由についてまだ考えていた。LINEでこの話をしたところ、性描写のキツさについて語られた方がいた。確かに『ノルウェイの森』は濃い性描写で読ませる作品なのだが、ならば女性の読者があれだけ惹かれた理由が見えてこない。『ノルウェイの森』に惹かれた女性の読者はいったいあの作品の中に何を見出したのだろう? 恐らく、私には想像もつかないものを見出したはずなのだ。こうして多彩な読み方ができるところがあの作品の醍醐味である、とは言えそうだ。

そして、そもそもハルキワールドになぜ多くの人が惹かれるのかについても考えが及んだ。私がなぜハルキワールドに惹かれるのかというと、彼は奇矯な想像力を駆使してシュールな世界を作り上げる。だが、その現実離れした世界は同時にどこまでもリアルだ。カフカの作品が同じように現実離れした想像力で成り立ったものでありながらこの現実を映し出しているのと同じように、村上春樹もまさに私のことを書いているのではないかと思うほどにリアルに小説を書いている。そこに惹かれるのだと思う。でも、他の人はどうなのかわからない。

高校生の頃にたまたま読んだ『1973年のピンボール』がきっかけで私はハルキワールドに入っていくことになった。それ以来、時には嫌いになってしまうこともあったけれど、それでもハルキワールドの住人として暮らし続けてきた。これからもそうなのだろう。前にも書いたが、村上春樹よりも優れた作家は確実にいる。ただ、春樹によって私は育てられたという恩を感じていることも確かなので、これからもそうした「春樹チルドレン」のひとりとして彼の世界と関わっていくのだろうと思う。「まだこんな小説書いてるのかよ」とか言うこともあるかもしれないにせよ。

今月6日、ノーベル文学賞が発表されるという。もちろん春樹がノーベル文学賞に輝いたら嬉しいとは思うものの、同時に受賞はないだろうなとも思ってしまう。獲るとしたらもっとエグい小説を書いているウエルベックみたいな作家が獲るのではないか。私はそんな名誉より、個々の読者にどう読まれてどう彼らの人生に影響を与えているか、そちらの方が大事だと思う。くどいけれど、私はその意味では春樹を充分にグレイトな作家だと思っている。幸いなことに春樹も(少なくとも表向きには)賞のことを特に記にしていないようなので、落ち着いて秋を過ごせそうだ。それはそうと、私は実はウエルベックを読んだことがないのだった。オーマイガッ!