跳舞猫日録

Life goes on brah!

2023/08/18 BGM: The Jon Spencer Blues Explosion - Calvin

今日は遅番だった。朝、スマートニュースで知ったニュースについて考える。自分の人生が「残りあと10年」だったら……そう考えてみて、自分が「あと10年」どころか「明日」のことさえも具体的にイメージしていないことにあらためて愕然としてしまう。裏返せば自分はずっと「今日1日をどう生きるか」というか「今日を悔いなく生きたら、明日のことは明日考える」というように生きてきたのだった。だから10年後、自分がどうなっているかについて何もイメージできない。やれやれ、とんだ「近視眼的」な生き方だ。今思うのは、「10年後自分の英語力が少しでも向上していたら」ということだ。そして「もっと多くの、より質のいい詩を掛けていたら」と。その詩が読まれる・読まれない、認められる・認められないは時の運の問題もある。ぼく自身にどうこうできる問題ではない。ならば一喜一憂せず、日々自分なりに着実に言葉のレパートリーを増やして詩を磨くことに努めたいと思う。今やっていることが10年後を形作る。今何もやっていなければ、それは10年後にどんな実を結ぶこともない。それがやっとわかってきたように思った。棚からぼたもちが落ちることはある。でも、ぼたもちを拾うためにはともかくもぼたもちが乗っている棚を見つけないといけない。天からぼたもちが落ちることはない。

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昼、時間があったので都築響一夜露死苦現代詩』を読む。前に一度読んだことがあった本だったが、最近になって詩を書き始めたその頭で読んだせいか前とはガラリと異なる趣の本として読めたように感じられる。この本の中では実にさまざまな言葉が紹介される。エミネムに代表されるヒップホップや暴走族が特攻服に記すキラーフレーズ、相田みつをの書などだ。そういった詩の中に、都築は狭義の「現代詩」つまり詩壇の中に閉じこもった詩がついに持ちえない力があることを見つける。現代詩の詩人は「夜露死苦」「仏恥義理」に代表されるようなキラーワードを書き得たか、と都築は挑発的に書く。ぼくはこれが必ずしもフェアな書き方だとは思わないけれど、それでも都築の問題設定を踏まえて「人口に膾炙した、皆が口ずさんだりできる『言葉』の中にこそ詩が眠っているのではないか」と考えることは面白いと思った。ぼくも書けるものならいたずらに難解になる詩ではなく、平易な中に深みのあるビートルズボブ・ディランの歌詞(いや、彼らはけっこう手が込んでいるだろうか?)のようなものを書きたい。だけど、常に失敗しているのだった。情けない話だけど。

夜、休憩時間に引き続き31日のミーティングで発表する内容について煮詰める。語ろうと思ったのは「ぼくが好きな日本の詩」についてで、佐野元春の詩に衝撃を受けたことから始めたく思っている。彼の詩(たとえば「ロックンロール・ナイト」のような物語性を孕んだ歌詞)について、そこからボブ・ディランルー・リードのような歌手・詩人を知りビート・ジェネレーションの詩人たちに触れたこと。その一方で、高校時代にフリッパーズ・ギターの詩に影響を受けそして小沢健二が東大に通っていた頃学んだという柴田元幸の訳業を通してポール・オースタースティーヴン・ミルハウザー、スティーヴ・エリクソンなどを読み日本語の勘というかセンスを身につけていったということ……そういったことが自分の詩の中に溶け込んでいる。あるいはあまり知られていないバンドだが b-flower の詩からも多大な影響を受けたことを思い出せる。作家なら村上春樹を筆頭に片岡義男沢木耕太郎といった書き手に影響を受け、自分なりに彼らの理知的な文体・スタイルを受け継ぎたいと思ったのだった。もちろんそれがどこまで成功しているかは自分ではまったくもってわからないのだけれど。

夜露死苦現代詩』を読み、そしてぼくも恐れないで果敢に自分が詩だと思ったもの、心の琴線に触れたものを推薦していこうと思った。『夜露死苦現代詩』の方法論としての、ともすれば「なんでもかんでも『現代詩』として読み込んでいく」姿勢から学べるところはあるのではないか。とはいえ、「雑」を肯定しつつそれが「なんでもあり」の「なしくずし」にならないように最低限「ここに『線』を引く」というルール決めは大事とも思うのでそれが難しい。ミーティングのことに話を戻すと、紹介したい詩として吉岡実ヴィスワヴァ・シンボルスカ、あるいは上田現「たま」の作品などが思い浮かぶ。いや、こんなマニアックな発表にニーズがあるかどうかが悩ましいのだけれど……そんなこんなで次の日曜日の別のミーティングでの発表についても考えなければならず、地味に忙しい1日となった。お金の管理のことや自分がネットラジオで話させてもらったことなどを話したいと思っているのだけれど、これもニーズがあればいいなと思う。語ることや書くことを通して自分を常にマネージメントしてきた自分のライフハック……そんな深刻なことを考えていても、仕事に入って頭の中でP.M.ドーンを鳴らし始めると忘れてしまったのだけれど。