昨日、就寝近くにぼくが英会話関係のZOOMミーティングで親しくさせていただいているとある方の英語での3分間スピーチを聞かせていただく機会があった。その方のお話はどのように心構え(mindset)を決めて英語学習に臨むかについてで、ミステイクや奇矯な英語になることを恐れずに自信を持って・なるべく動じずに英語を話していくことがだいじだというのが結論だった。そこから質疑応答の時間も設けられ、ぼくも「ぼくは自分のトークスキルにまったく自信はありませんが、英語で話す時はキャラクターが変わることに気づきます」といったことを話す。
そこで話題になったこととして、「Low aim is a crime」というフレーズ(ブルース・リーなどが引用してきた言葉で、訳すなら「標的を低く設定することは犯罪的だ」となる)をどう受け取るか、というのがあった。目標設定(志、とも訳せる)を低く設定してそれに甘えず、高い目標設定をおこなってそれに邁進してこそ夢がかなう、ということだろうか。だとしたら、ぼくはまったく逆の生き方をしていることになる。ぼくは目標設定は低いに越したことがないと考える。実際にぼくが断酒会で学んできたのは「1日断酒」をどう達成するかだ。人から見れば「たった」「たかが」1日に過ぎない。だが、この低い目標を乗り越えればともあれ達成感・充実感を抱ける。それを繰り返すことが逆説的に道を拓く、という考え方だ。ぼくはどうやら、こっちのほうがうまく性に合うみたいだ。
さて、今日の話になるがぼくのグループホームの起床時間は7時と設定されている。だが、今朝起きるとその時間を寝過ごしてしまっていて8時だった。もちろん7時50分からはじまる英会話のZOOMミーティングもあやうくすっぽかすところで、なんとか食い込んで参加することができた。今日の話題についてはほかのメンバーのあいだでは話が終わっており、自由闊達に雑談を繰り広げていく。予知夢(prophetic dream)や、あとはクリスマスにちなんだ話題で盛り上がった。ぼくがクリスマスの映画として『スモーク』(ウェイン・ワン監督、ポール・オースター脚本)を挙げると皆ご存知なかったらしく、どうしてそんな映画を知っているのかと驚かれた。大学生の頃、恵比寿ガーデンシネマで観て以来ぼくはこの映画をマイ・フェイバリットに挙げるようにつとめている。
そのZOOMミーティングの後、朝食を摂りグループホーム本家に赴く。そこで用事を済ませた後に図書館に行き、沢木耕太郎『天路の旅人』を借りる。もう1冊借りられたのでいったいなにを借りるか考えあぐねたあげく、来年にぼくが参加しているオフラインでの英語研究会の会合がまた復活するということを教わっていたのでその会合で以前に輪読したことがあったロアルド・ダール『マチルダは小さな大天才』を借りる。その後、雨が降りそうな空模様の中またイオンまで行きそこで沢木耕太郎『ミッドナイト・エクスプレス』を読む。読みながら、英語でメモパッドにメモを書きつけていく。
前にも書いたけれど、沢木耕太郎は大学を卒業した後入社した会社を迷った挙げ句、決定的なあるできごとがきっかけで1日で退職するという決断をおこなう(その顛末も『ミッドナイト・エクスプレス』に書かれている)。ぼくの場合、そうした運命の瞬間・岐路というのはたぶん高校を卒業する際に地元の神戸市外国語大学か、あるいは私大では関関同立を受けるかと考えていた頃に兄が「早稲田を受けてみたらどうだ」「東京はいいところだ」と薦めたのがきっかけで、ならば軽い東京見学を兼ねて記念受験のつもりでやってみようと受けてみたことだったかもしれない。ただ、もっと大きな岐路は40の歳、メンターとお会いしたことだっただろう。
こう考えてみると、ぼくの運命はそんな沢木的な「右か、左か」「一か八か」な選択を強いられて選んだものではなく、ほんとうに「なすがままに」決まったものだったのだなと思う(沢木耕太郎を批判したいわけではまったくない。念の為に)。だからいまの自分にいたるまでに無理をした記憶がない。いや、あったかもしれないけれど(断酒をはじめた頃は別の意味でキツかったし、ジョブコーチ制度を勤務先の会社に紹介するまでも厳しいものがあった)それでもまあ、都合の悪いことは忘れてしまえるものなのだろうか。フラッシュバックなど、忌まわしいことをしつこく覚える脳でもあるのでそれは違うかもしれないが。
昼、断酒会の昼例会に参加する。なかなかこの断酒会にも参加できず不義理をかさねていたのだけど、こんかい体験談を話させてもらってありがたかったと思った。ほかの方が、真の意味のしあわせについてどのように考えておられるか話しておられて、ぼくはまずなによりもこうしたつながり(断酒会・英会話関係・発達障害の自助グループ)に救われていると感じられた。そのことを喜びたいと思う。その後、昼例会が終わった後自室に戻り『ミッドナイト・エクスプレス』の続きを読み、とうとう読み終える。2周目になるこんかいの読書も、実に学びの多いものとなったと思った。次は『一瞬の夏』に挑もうかと思う。
『ミッドナイト・エクスプレス』を楽しんだ後、夕食を摂りそして8時からある英会話のZOOMミーティングに参加する。そこではもっぱら「私が選ぶ今年の漢字」「今年印象深かったこと」などが話題となっておもしろかった。ぼく自身もなぞなぞを披露したり、ほかの方の話題に聞き入ってしまったり……ある方が、すでに定年退職された後に残りの人生を有意義に生きるべくポジティブな心構えで過ごしておられる様子をシェアされて、それが印象的だった。ぼくはどうだろうか。どこかで「明日、この人生終わるかもしれないなあ」と思い、「だったらいいけれど、せめて後悔だけは(なるべく)したくないな」と思う気持ちというか意地はある。明日は明日の風が吹く。
