実を言うと緊張感のせいか今日はなかなか朝寝付けず、こないだの月曜日にもらった頓服を2錠飲みオーバーワークしている頭を落ち着かせる。それで床に就いたものの、こんどは寝坊してしまい気がつくと7時40分になっていた。なので今日はもう英会話のZOOMミーティングはサボろうかとも思ったものの、それでもシャワーを浴びて洗濯機を回すといういつもの段取りをするとなんとなく「終わり近くの時間だけでも顔を出そうか」という気持ちになり出席する。その後、朝食を摂り約束していた時間までぼんやり過ごす。
約束の時間になり、ある知人が車で迎えに来てくれたのでその方の運転でいざ現場となる高校におもむく。今日はその高校に台湾から修学旅行で高校生たちがおとずれて、日本の高校生たちと文化的な交流会を楽しむということでぼくが彼らのコミュニケーションのアシスタントの1人としてボランティアをつとめることになったのだった。ただ、主役はもちろん当の高校生たちなのでぼくはつとめて黒子に徹することに決めて、しゃしゃり出ないように心がけることにした(もっとも、しゃしゃり出ようとしてもぼくのへなちょこな英語力ではどうしようもないのだけど)。
時間になり、高校生たちと先生たちが体育館に集いそこで歓迎式を執り行う。和太鼓のパフォーマンスが行われ、その後に先生たちや生徒たちがもっぱら英語であいさつやスピーチをおこなう。ぼくもいつも携帯しているメモパッドに英語でメモを書いていきながら、和太鼓の迫力あるパフォーマンスに感動したり彼らの学校生活や異文化へのあこがれのアピールを見守る。彼らにとって台湾や日本とはどのように映っているのだろう……ぼくの時代はインターネットなんてなかったので、台湾のこともさっぱりわからずそれゆえにきわめて不遜・失礼ながら「アジアの小国」と見下す心理があったかもしれなかった。
そんなノスタルジーに浸っているおっさん(初老?)をよそに式は進行し、次にそれぞれの学年の生徒たちが教室に集ってそこで自己紹介をしたり、共同作業(コラボレーション)として折り紙を折るというイベントをこなす。こんかい折ったのは鶴というきわめて難易度の高いオブジェで(いや、折ることはできたとしてもそれを他人に説明するのは日本語でも難しかろう)、彼らは時に軽口を叩きながら作業をこなす。それを見ながら(けっきょくぼくの英語はあまり役に立たなかった。「海苔」を言い表す「seaweed」という言葉が役に立ったくらいだ)、ふと生徒たちの1人が自己紹介で心理テストの1種であるMBTIの結果をシェアしていたのが印象的で、これはぼくもやってみたいと思った。
その後、昼休憩の時間になる。買ってきたサンドイッチを食べ終えた後、国際交流協会のほかの方々とさっきの式典の内容や高校生たちの様子などを雑談として話す。どのように英語を勉強しておられるのですか、という話題になりほかの方が留学体験や英会話教室の話などをされる。ぼくもそこで英語メモを見せたところ(いや、純然たる「走り書き」「なぐり書き」です)ほかの方々に驚かれた。あるいは「何語で夢を見ているか」といった話も話題に上ったりして楽しいお昼を過ごす。
それから、ぼくの班(ぼくと同行してくださった女友だちとぼく)は和太鼓の演奏をおこなう部の文化交流を(太鼓の初歩的な演奏の仕方を台湾の高校生たちに教える、というかたちで)手伝うことになる。ただ、そこでもぼくは当意即妙に英語が出てこず苦労させられる。いまでも困ったのが「スティックの根元を持ってください」という言葉をどう英語に訳すかだった。あとは「(速まったテンポを)元にもどします」という言葉も出てこない。これらはあとでDiscordで友だちに訊いたら「Hold the base of your sticks」「Let's go back to the original tempo」といった言い方があると聞いた。なるほどなあ……。
けっきょく、ぼくは逆立ちしたって通訳になれるタマではないことが(あらためて)わかったのだった。ただ、それで終わってしまってはあまりにも自虐的で、こんなことをこの時代に言うのも問題があるにせよ「男がすたる」のもたしかなのだった。もっともっと、英語にかんしては改善・学習の余地があることを思い知り、ふんどしを締めなおす決意を新たにした。
なにはともあれ、その高校生たちの交流会も無事に終わり女友だちの車で送ってもらい自室にたどり着く。車中ではこないだの金曜日の忘年会で仕入れたデンマーク語「Hygge(居心地がいいというような意味。デンマーク人が肝要と考えている概念らしい)」の話や今後の国際交流の話などをする。その後、図書館に行ってポール・オースターの小説を借りた後沢木耕太郎『作家との遭遇 全作家論』の続きを読む。沢木が紹介している逸話として、三島由紀夫に喧嘩を売ったある論客の本棚には本が2冊しかなかったというものがあるのを知る(『白鯨』と『旧約聖書』だそうだ)。ぼくはとうていそこまで本を絞りきれない。自分の場合、このまま溜め込んだ本の中でのんべんだらり暮らすんだろうなあ、と思った。そして思い出したように、ポール・オースターや村上春樹や沢木耕太郎を読み返すのかなと。
夜、時間を見つけてMBTIをおこなう。ぼくの結果は「INFP(内向的)」な性格の「Mediator(仲介者)」というものらしい。人助けが好きで大義に燃えやすい、ということだろうか。今日の活動はたしかにそんなぼくの「仲介者」たる性格とマッチしていたような気もしないでもないのだけれど……おもしろいものだ。ほかの人からはどう見えるんだろう?
