跳舞猫日録

Life goes on brah!

2023/02/16 BGM: Julia Fordham - Happy Ever After

昨日古井由吉『槿』を読み始めたと書いてしまったけれど、その後私は図書館に行き古井由吉の本を2冊借りた。久しく古井由吉を読んでいなかったのだけれど、また彼の深遠な世界に触れるのもいいかなと思い始めたのだった。それで『槿』の続きを読むはずが、借りた本のうちの1冊である『魂の日』を読んでみたらこれが実に面白かったので、『槿』がかなり長い小説であることもあってこちらを先に読むことにした。古井が入院した時の生活を綴ったもので、私自身は(少なくともここ最近は)入院とは縁のない生活をしていることもあって興味深く読んだ。漱石の『硝子戸の中』に関する言及が興味を惹き、古井由吉にとっても漱石は重要な作家だったことを思った。私もいずれ漱石はきちんと完読しないとと思い、しかし『行人』『明暗』といった後期の作品を未だ読んでいないのだった。そうこうしているうちに人生が終わってしまう……なんてことは避けたいのだけれど。

古井由吉の書いたものと出会ったのはどういうきっかけでだっただろうか。まったく思い出せないのだけれど、彼が芥川賞を受賞することになった『杳子』を読んだ時、読んでいて眩暈さえ実際に体感してしまうことに驚いたことは思い出せる。それくらい古井由吉が書く描写は克明なものであり、こちらを引きずり込む筆力を感じさせるものだった。その後名作の誉れ高い『仮往生伝試文』を読むようになり、10周くらいしたはずなのに未だに私はこの作品の魅力を片鱗さえも掴めていないことを思う。もちろん数多く読めばいいというものではないのだけれど、私はどん臭い読者なので何度も読みに読んで骨身にまで染み込ませないと理解できないのだった。そのようにして私は私の人生における神秘の書である村上春樹ノルウェイの森』やフェルナンド・ペソア『不安の書』、ポール・オースター『ムーン・パレス』を理解しようと試みたことを思い出せる。

どうして古井由吉がここまで沁みるのだろうかと考え、多分にそれは私が「中年の危機(ミッドライフ・クライシス)」を体感していることから来るのだろうと思う。この歳になってみるともう自分がこの人生において成し遂げられることも次第に見えてくる。自分に嘘はつけない。この日記にも書いている通り、私は自分の小説が当たりアニメ化・映画化もされることさえも夢見たものだった。人生大逆転だ。その時は音楽は誰に依頼しようかなんてアホなことも思った……だが、ならその白昼夢/妄想からどうして今は(完全にとは言わないにせよ)醒めることができているのだろう。今の仕事の中に確かにやりがいを見出し、人間関係において安らぎを感じ発達障害者であるという現実を受け容れられるようになったのだろう。一朝一夕で私はそうして自分に対する諦観と矜持を抱けるようになったのではない。時間が必要だった。焦ることはない。一日断酒、凡事徹底を貫いてこれからも与えられた時間/人生を生きていきたい。

夜、ZOOMでミーティングを行う。今回の話題は天体観測だった。参加者の方がスマートフォンを駆使してオンラインの天体望遠鏡にアクセスし、そこからさまざまな星座の画像を見せて下さる。人間の寿命を超えた長い歳月を星空の星たちは生きることになることを思うと、私という人間がいかにせせこましい時間感覚の中で生きているかということを思い知らされる。きれいな星空の写真を見ていると時間を忘れ、現実さえも忘れて崇高さを感じられた。楽しいひと時を過ごしたことをありがたく思う。私自身もまたこのミーティングで近々何か発表する予定になっているのだけれど、いったい何を話したらいいものか考えあぐねている。私が日々アクセスして英語を学んでいるDiscordから、自分なりに掴んだ英語学習のコツについて話してみるのはどうだろうか?