跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/12/15 BGM: Spandau Ballet "True"

本棚を見ていると、ふと内田百閒の文庫本を見つけたので読み返したくなった。百閒『冥途・旅順入城式』『東京日記』は私が大学に在籍していた時に生協で買い求めたことがあり、その後長く読み耽った本である。また百閒が綴った幻想的な世界に触れる、というのもいいのかもしれない。あるいは川端康成『雪国』や古井由吉『山躁賦』を読み返す……そうした異境を覗き見るような作品が、この時期の私の関心を引く。私にとって異世界とはそうした、魔界とも呼べる禍々しくも神秘的な場所だ。ゆえにミステリアスで、生まれ変わったような気持ちにさせてくれるものでもある。

私も日本人の血が流れている、と言えるのかもしれない。日本で確実に生まれ育った、そうした「ナショナリティ」に染まっている……上述した本はそんな私の日本人的な感受性に強く訴えかけるものだ。かつて、まだ20代だった頃は「国民国家国家主義もぜんぶ幻想のものだ」とアホなことを考え、ナショナリズムを妄想と斬って捨てて悦に入ったものだが今は自分の思考のベースに「日本」が濃く影響していることを自覚できる。私はずっとそうして「日本」に支えられ育てられてきたし、これからも生きていくことになる。

今日はZOOMで、「長水城を歩く」というテーマで講義を聞かせていただく機会があった。私の住む土地にゆかりの深いお城の歴史を紐解くというものだ。私は考古学的な(?)歴史に関してはからっきし知識がないのだけれど、遠い過去にさまざまな人々が織り成したドラマに触れることができたように思われて、ダイナミズムを感じた。私もそろそろ時代小説を読んだりして歴史から学ぶことが必要なのかもしれない。来年は目先を変えて藤沢周平の『たそがれ清兵衛』から始めてみようか、とも思い始めた。面白いだろうか。

今日、会社で冬のボーナスの知らせを受け取った。底冷えのする冬、どれだけボーナスをアテにしていいものかわからない。幸い欲しい本もこれから出る青山真治の日記くらいなので、あとはグループホームのスタッフの方に預けたいとも思う……いや、正直に言えばもっと欲しい本も他に買いたいものもないでもないけれど、ギリギリの生活を続けているうちに欲望もやせ細ってしまったかもしれないとも思う。これからもフェルナンド・ペソア古井由吉ウィトゲンシュタインなどを読み返し、「あるもので満足」な日々を過ごすことになりそうだ。