跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/09/28

ここのところ村上春樹の作品を集中的に読んでいる。今日、朝活の一環としていつものようにイオンに行きそこで『アンダーグラウンド』を読み始めた。当たり前のことを書いてしまうが、『アンダーグラウンド』から思ったのは地下鉄サリン事件に巻き込まれた人たちの顔が具体的に見えてくることだ。さまざまな人たちの生活があり、そして人生がある。それらの人生は尊ばれるに値する。そう思うと、私自身は過去にそうした「普通の人生」を過小評価していたのではないかと思った。敢えてこんな言い方をすると、普通に生きることをどこかでナメていたのかもしれない。

普通に生きる、ということ……私自身47歳になって、結局結婚もせず家庭も持たず生きている。もちろんこんな人生を選んだのは私だ。普通の勤め人ならば『アンダーグラウンド』に登場するように否応なしに辛い通勤に耐え、ストレスフルな環境に向き合いながら仕事をこなすのだろう。私はそんな人生から(無自覚だったにせよ)逃げた。そして、自由時間に好きなだけ本を読んだり音楽を聴いたりする人生を選んだ。どう生きれば正解か、という問題ではないことはもちろんわかっている。だが、ならば私もまた他人の人生を「それはそれとして」認めなければならない。

今日は4度目のワクチン接種の日だった。ワクチン接種も4度目になるとこちらも心構えができてくる。打って、15分待って終わり。ワクチンがすんなり私の身体に馴染むことを祈る。夜、『羊をめぐる冒険』を読む。村上春樹はこの作品において、本格的に「物語」を綴ろうとしている。以前の作品は断章が主体となった語り口で成り立っており、故に滑らかな「物語」ではなく「断片」によって構成されたものとなっていたがこの小説から滑らかに長い文を読ませる「物語」として結実している。端的にこれは作家としての進化だと思った。

次は春樹の作品は何を読もうか、と考え『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を引っ張り出す。春樹の作品に惹かれるのは、単純に言えばストーリー展開が面白いからだ。いや、それこそミステリ/ハードボイルド小説を漁ればレイモンド・チャンドラー矢作俊彦のような面白い書き手の作品はゴロゴロ出てくる。だが、春樹の作品は陰謀論めいた胡散臭い面白さがある。この世界そのものが影の組織に操られているのではないか、というパラノイアックな価値観を味わえる、と言えばいいか。故にかつての私のような若い読者が惹かれるのだろう。