跳舞猫日録

Life goes on brah!

2022/04/18

今日は遅番だった。午前中時間があったので永井荷風『濹東綺譚』を読む。改めて読み直すと、非常にきれいな日本語で書かれた美しい作品だと思う。とある女性との逢瀬が書かれているのだけれど、彼女に向けた眼差しの中に優しさを感じる。谷崎潤一郎が書くような女性への畏怖の念ではなく、自分の娘を見守るような父性から来る優しさと言うべきかもしれない。今なお、この日本語は力があるなと思った。簡単に読めてしまう作品だが、侮りがたし。久しぶりにきれいな日本語を読めたので、心が洗われたようなそんな感覚を感じた。

川本三郎永井荷風に関するエッセイを読んだり、実際に荷風の書いたものを読んだりしていると自分も荷風のように書けるのではないかと思ってしまう。私は女性にまつわるそんなに華々しい思い出はないのだけれど、それでも荷風やもしくは古井由吉松浦寿輝の小説の真似事をしたら一作か二作くらいは書けるのではないかと思ってしまうのだ。Discordでとある作家の方のサーバに参加させていただくことになったので、私も一作何か書いてみて発表するのもいいかもしれない。でも、前に書いていた「青い車」も何とかしたい。焦らないようにしたい。

そういえば、女性との浮いた話というか華々しい恋バナとは自分は縁のない人生を過ごしてきたなと思った。いや、3度ほど自分は恋愛を経験してきたのだけれど、結局実らなかった。だがその3度の恋愛経験から自分は多くを学んだと思う。橋本治が、恋愛は中途半端にできあがった自分を壊す意義があると語っている。私も恋愛によって自分自身がわからなくなる経験をして、そこから立ち直った。実に得難い経験だった。これから、自分は運命のソウルメイトと会えたりするのだろうか。わからないけれど、これも焦らず待つべきなのだろうと思う。

荷風の書いたものを読み、加齢について、そして老いについて考える。私も確実に老いているわけだし、その老いをリアルに受けとめたいとも思う。いつまでも若いつもりでいるのもみっともない。自然に、自分の心の声に従って生きる。私もかつてはライトノベルを読み漁り世間の動向についていこうと必死だったのだけれど、今はエリック・クラプトンジミ・ヘンドリックスのブルースを聞いたりしてすっかり自分の世界に浸ってしまっている。このまま50になっても60になっても自分は小津や成瀬の映画を観たりして過ごすんだろうなと思っている。