人生は上々だ

Life is good.

ペシャンコな青春時代

親愛なるマーコ・スタンリー・フォッグ様

最近、気になっているニュースがあります。日本で起きた事件です。東大前で、17歳の青年が3人を刺傷したという内容です。彼のことがいろいろなメディアで報じられています。曰く、彼は神童と呼ばれていたとか東大を目指していたとか(東大は文字通り、日本でトップの大学です)、医師を目指していて勉強がうまく行っていなかったとか、語られています。このニュースが気になるのはなぜかと考えたのですが、多分ぼくも同じような原風景を青年時代に見たからではないかと思います。頭がいい子だからこそ負わなければならなかったプレッシャー……。

マーコ、『ムーン・パレス』を読んでいると、あなたは私生児であり母親を幼い頃に亡くし、父親の存在を知らずに育ったとあります。あなたはコロンビア大学に入ったほどの俊英ですが、あなたが親から「いい大学に行け」とプレッシャーを背負わされたという描写はありません。あなたは生まれ持ってのスマートさを発揮してコロンビア大学に入学したのですね。ぼくも、実を言うとそんなにガムシャラに勉強した記憶はありません。学生時代やっていたことといえば本を読んだくらいです。親からプレッシャーを背負わされた記憶もありません。

なのですが、それでもぼくは刺傷事件を起こした彼の気持ちがわかる気がするのです。ペシャンコになるまでプレッシャーやら生きづらさやらに潰されてしまい、そこから突破口を開くとするなら彼は「東大に入る」しか考えが及ばなかったのかな、と。ぼくも、田舎町の学校特有の鬱屈した空気に押しつぶされそうになった時に「大学に行けば都会に出られる」と思っていました。それまで耐えよう、と。いや、ここまで戦略的に考えられていなかったかもしれない。とにかく高校時代の頃のぼくは「生ける屍」でしかなかったので……。

マーコ、あなたはコロンビア大学に入学しますが、その後神経を病みカフカ「断食芸人」ばりの狂気を以て断食生活を敢行します。その理由ははっきり書かれていないのですが、おそらくあなたも見守ってくれた叔父が亡くなり、天涯孤独で無一文になった身の上で、生きていてももういいことなんてなにもないと思ったがゆえの自殺を試みた。それがつとめて腹を減らす生活をして、挙句の果てに路上に出てホームレス生活を過ごす顛末となったのではないでしょうか。そう考えれば、ぼくたち3人はどこか似ていると思うのです。