跳舞猫日録

Life goes on brah!

2021/10/29

今日の読書は吉田健一『時間』を読んだ。吉田健一はこの本で、私たちの生活に密着している時間そのものについて真剣に考察している。大げさな感想になるのだが、私はこの本を書くことで吉田健一は私たちの世界を救いたかったのではないかと思ってしまった。それくらい、神にこそ言及されないものの考察は崇高で、日常から半ば遊離したところで展開されているように感じられたのだ。下手をすれば空理空論に堕ちてしまうギリギリのところで展開される考察は、再び日常に戻ってくる。実に味わい深い本だと思った。

それにしても、我ながら不思議に思うのはどうして吉田健一に惹かれてしまうのだろう、ということだ。他の「みんな」のように、百田尚樹を読んだりしない自分の好みについて考えてしまう。子どもの頃からこの変な好みというかマニアックさのせいで随分生きづらい思いをしたのだけれど、でも人は人と違うように作られているのでそうした嗜好の違いが生じるのはしょうがない。考えつくことも我ながら変なことばかりだし……人間の脳は宇宙のように謎ばかりだと聞いたことがあるが、確かに私は謎な存在だ。

時々変なことを考えてしまう。もし、この世界が止まってしまったら、この時間が止まってしまったら……と。そんなことは起きっこないのだけれど、仕事前のプレッシャーが高まっている時とか仕事中とかにはそうした考えが芽生えてくることもある。でも、そんな変なことを考える人がひとりくらい居てもいいではないか、とも思うのだがどうだろう。そんな変な考えが、やがて堂々たるタイム・パラドックスを扱った作品であるクリストファー・ノーラン『TENET』のような芸術を生み出すかもしれないではないか、と。

ともあれ、私は今日も本を読み、そして考える。専門用語で「クォンタム・ジャンプ」と言うらしいのだが、溜め込まれたエネルギーが誰も予想だにしなかった発展を見せることがこの世界ではありうると聞いたことがある。私の好きなラッパーであるBOSS THE MCの言葉を借りれば、「経験というパーツを一生かかって集め」という言葉通り、地道に日々の考察を書き留め本を読む。それが誰も考えつかなかった発展を見せることがありうる。それを期待しつつ私は今日も本を読み、考える。そうだ、これが私の生きる道……。