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バーラ・ハルポヴァー&ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』

バーラ・ハルポヴァー&ヴィート・クルサーク『SNS-少女たちの10日間-』を観る。もちろん、インターネットが安全な領域ではないことは私も知っている……つもりだった(私自身女性の顔のアイコンを使っているので、稀にスットコドッコイなユーザーから猥褻な画像を送られることもあるのだった)。しかし、まさかここまでとは。残酷に言えば、これから語るように既成概念を壊す試みが観られないドキュメンタリーであるとは思う。「男たち」がいつだって悪で女性は弱者。その図式は基本的に疑われない。しかし、ここに登場する「男たち」の姿を見るとそれもむべなるかな、と思える。まさに「男たち」は野獣のような様を見せる。


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チェコで制作されたこの映画は、12歳に見せかけた童顔の女優たちが大手SNSで(FacebookSkypeなど、きちんと具体名を晒しているところが「攻めてるな」と唸らされてしまう)登録することでどんな「性的虐待」に巻き込まれうるかを実験的に検証したドキュメンタリーである。もともと彼女たちはこの実験に参加する前から性的虐待にまつわる記憶を保持していて、それを打ち明けるところも何気に見どころである。そのような記憶がフラッシュバックする危険を承知で挑むのだから(「10日間」、彼女たちは専門のカウンセラーなどに助けを求められる環境が整えられている、とはいえ……)。

そこで展開されるのは、登録してオンライン状態になったらすぐさまプロフィールを見てアプローチを仕掛けられるという現実だ。彼女たちは繰り返すが12歳を装う。しかし、そんな彼女たちの年齢を無視して……いや、年齢がそうであるからこそなおのこと興奮するのか「男たち」は過激なトークを求めてくる。セックスの経験はあるか、ヌードをお金と引き替えに見せてくれるか否か、等などだ。製作者側は周到に合成写真として作ったヌードまで用意して、そうした「男たち」を揺さぶりにかける。なにも知らない「男たち」はその餌に飛びつき、更なるものを要求する。

びっくりしてしまったのは、製作者側と交際があると思しきひとりの男がこの実験のターゲットとして「少女」に飛びついてきたことだ。彼は現に子どもたちを相手にした仕事をリアルでしており、製作者側はそんな彼が腹に性欲を溜め込んで子どもたちと接していたことを知り愕然とする。だが、ネットはもちろんこんな「男たち」ばかりではない。ひとりの少女が出会った男は、笑顔が爽やかな(つまり、顔出しを厭わない)人物でありリアル少女を性欲の対象と見做すことに柔和と違和感を語る。つまり、ネットにはそんなまともな人も居る、というメッセージも含まれているのだった。

このドキュメンタリー、難しいなと思うのは舞台となるのが基本的に女優たちの「心の中」であること。「心の中」で考えていることはもちろん表に出てこない以上、彼女たちが自分たちを性的対象としてしか見做されない悲しさや、あるいは逆ギレした「男たち」から放たれる心無い言葉にどれほど傷つき、あるいは陰部を撮影した写真を次から次へと見せつけられることにどれだけ負担を感じているか、彼女たちの「様子」を見ないとわかりにくいのだ。彼女たちが自分の言葉で切々とそんな「傷」を語ればよかったのに、とも思ったがむろんそれはないものねだりかもしれない。自分の「傷」を語ることがセカンドレイプにならない保証はどこにもない。

最後の最後、喫茶店で男と出会ったとある女優は(むろん、この出会いもドキュメンタリーの演出の一環だ)自分に対してされた仕打ちにマジギレして飲み物を男に浴びせて席を立つ。このマジギレがこのドキュメンタリーで一番光っているところであると思った。映画の製作者側も、こんな絵が撮れるとは思っていなかったのではないか。こうして映画になってしまうと、彼女たちを逆恨みする変質者が現れかねない。それを踏まえてもこのドキュメンタリーに参加した「少女たち」の勇気を買いたい。「野放し」にしている運営側に対する批判も仕込まれているのもポイントが高い。