跳舞猫日録

Life goes on brah!

2021/08/05

この日記の内容が難しくなっているのではないか、と心配している。いや、私の書くものはなんだって難しいのだけれど……私は大学生の頃、左翼の運動に手を染めていたことがある。だが、先輩の書くものはなんだか専門用語を散りばめた小難しい、読むのに骨が折れる文章ばかりだったので嫌気がさしてしまい、もらっても読まなくなってしまった。平たく書けるならそれに越したことがない、と思うようになったのはその体験からだ。村上春樹は「文明とは伝達である」と言わなかっただろうか。村上春樹のファンの私としては、彼のような文章を書きたいと思っている。

最近は音楽はソウルIIソウルというグループばかり聴いている。私の青春時代、つまり80年代の末期から90年代にかけて活躍したグループで、甘く洗練されたR&Bを聴かせてくれる。ネットフリックスで『親愛なる白人様』という黒人差別をコミカルに扱ったドラマを観始めたり、スパイク・リーの映画を観たりしているせいで「黒い」文化に興味を持つようになったのだった。近所の図書館にもBLMに関する本が沢山入っているので、それらを読みたいと思いつつ手が回っていない。この黒人文化をめぐる私のマイ・ブーム、いつまで続くか。

仕事が終わり、帰ってから『THIS IS US 36歳、これから』を観る。相変わらず良くも悪くも行儀のいい、非の打ち所がないドラマだと思う。英語の言い回しで「レモンを与えられたら、レモネードを作れ」というものがあるが、この言葉がこのドラマの中でも応用されて登場する。私はこの言葉が好きだ。昔はどうして自分が(もっと言えば「自分『だけ』が」)こんな目にと腐っていたが、今は与えられた状況の中で最善のことを為そうと私なりに努力しているつもりである。「天は自ら助くる者を助く」という言葉を信じて。

夜、イルディコー・エニェディ監督の映画『心と体と』を観る。村上春樹の小説みたいな映画だと思った。男女の、闇雲に恋に溺れて自分を見失うのではなく、むしろ自分を大事にしたまま未知の恋におずおずと足を踏み入れていく「付かず離れず」の関係を描いたクールなドラマではないかと思ったのだ。この映画は光が綺麗な、白い映画だと思った。だがその白さの中に、ナスティというか邪悪な要素、歪んだものは入り込んでいる。その歪みの描き方が洗練されているところに、ミヒャエル・ハネケの映画さえ連想してしまった。